2011年1月24日月曜日

パヴィヨン・ルージュ(マルゴー)Pavillon Rouge du Ch. Margaux 2002 13%




■Ch. マルゴーのセカンド・ワイン「パヴィヨン・ルージュ」を飲む
洋画紳士:今回は直球勝負ではなく、変化球でいってみたいと思います
酒豪先生:さて、どういう趣向ですか
洋画紳士:「パヴィヨン・ルージュ」を用意しました。「マルゴー」にはちょっと手を出せませんでしたので・・・
南 海 子:別に「マルゴー」でなくてもいいですよ。セカンドといっても若い樹のブドウを使っているという違いだけだと聞きましたが・・・
酒豪先生:実際には「マルゴー」とはブレンド率が違っているらしいので、樹が若いというだけでもなさそうです(※使われているブドウ種はカベルネ・ソヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プチベルド、マルベックなどだが、収穫年により比率は変わるという)
南 海 子:セカンドワインというのは、本家のラベルで出荷するのは憚られるけれど、決して品質が落ちるわけではないので、別の名前を付けて売っているのででょう?
洋画紳士:たしかにラベルの中央に描かれている建物は「マルゴー」のシャトーですし、"PAVILLON ROUGE" 「パヴィヨン・ルージュ」と銘打っていても、その後には" du Chateau Margaux" と続いているのですから、本家の威光は受け継いでいるのです
酒豪先生:売る方も「マルゴー」をちらつかせているし、買う方も「マルゴー」のセカンドだから買う、というところはあるでしょうね。値付けもネームヴァリューを反映しています
南 海 子:"Pavillon Rouge" はどういう意味でしたっけ?
洋画紳士:「パヴィヨン」はいわゆる「パビリオン」ですよ、万博なんかで「なになに館」というのがあるでしょう。「ルージュ」は「赤い」ですから、ラベルに描かれている「赤い館」のことですね。
南 海 子:なるほど・・・「マルゴー」が日本で急に有名になったのは渡辺淳一の「失楽園」がきっかけでしたね
酒豪先生:そう、「マルゴー」なんか飲んだこともない人たちが名前だけ覚えたんです。そして元々高かった値段がいっそう高くなって手が届かなくなってしまった
洋画紳士:他の一級ワインの名前よりもカタカナで発音する時、言いやすいこともあると思います。それに「○豪」は豪華な感じです
南 海 子:冗談好きですね。さて、そろそろ飲んでみましょうか。香りのよさはさすがです、セカンドだからということはないですね。グラスを近づけただけで分ります
酒豪先生:2002年ものですから、そろそろ飲み頃になっているのでしょう。色も薄くなっていますし、香りも豊かで、最初の一口で幾つもの要素が混じりあっていると感じられました
洋画紳士:香りのよさは分りました。そして、香りというのはグラスから立ちのぼるだけでなく、口に含んだ時にも感じられるものですね。しかし味のニュアンスが分るようになるには、私はまだ年季が足りないようです
南 海 子:こういう繊細さが「エレガント」と評される所以だと思います
洋画紳士:初心者には難しい味わいですが、酒豪先生は「マルゴー」を飲んだことがありますか。比べてみてどうでしょう?
酒豪先生:以前飲んだことがあります。今みたいに高価になる前のことですが・・・比較というのは難しいですね。今ここに「マルゴー」があって飲み比べるというのなら、なんとか判断できるかもしれないけれど、かつての記憶と比べることはできない。私にはパーカー氏のような能力はないですよ
■評価
南 海 子:4.5
酒豪先生:4.5
洋画紳士:4

2011年1月20日木曜日

PROMIS プロミス CA' MARCANDA (GAJA) トスカナ・イタリア 2007 14%







■ガイヤが作った「スーパー・タスカン」の実力はどうか
洋画紳士:これまでに何度かフィリップ・ロートシルト男爵の名前が出てきましたが、イタリア・ワイン界で帝王と呼ばれているのはアンジェロ・ガイア Angelo Gaja です
南 海 子:西洋人は帝王が好きなのね
酒豪先生:ガイアは元々北イタリア・ピエモンテでバルバレスコ、バローロの作り手として有名な人でした。そのガイアがトスカナのボルゲリ村(Bolgheri) に土地を買ってワインを作り始めたのです
南 海 子:"PROMIS" が「約束」だというのは分りますが、ラベルの一番上に書かれている "CA' MARCANDA" というのは何でしょう
酒豪先生:それは彼の会社の名前です。地図で見ればシエナの西の方にあるはずですが、ボルゲリというのは小さな村らしくて、普通の地図には載っていませんでした。でもそこは有名な「サッシカイア」と同じ地域なんですよ
洋画紳士:今日の「プロミス」はカ・マルカンダ社のワインで、輸入元のホームページによると、メルロ55%、シラー35%、サンジョベーゼ10%のブレンドになっています
酒豪先生:イタリア固有種のサンジョベーゼがたったの10%しか使われていないんだ。国際品種を使ったワインだということは知っていましたが、こういう比率は意外でしたね
洋画紳士:"PROMIS" の綴りを "PROMISE" と英語にしなかったのは、イタリア色を出したかったのではないですか
南 海 子:"E" 一文字がサンジョベーゼ10%分の意地を表しているのかしら? ところで、トスカナ・ワインの中でも有名な「サッシカイア」は「スーパー・タスカン」と呼ばれていますね
酒豪先生:トスカナ地方は元々ワインの産地だったのですが、国際的な評価がそれほど高かったわけではなかったのです。「サッシカイア」は1960年代後半から販売を始め、数年後には世界でも超有名になりました。それもそのはず、DOC規格に入らないワインが世界中で高く評価されたのですから一体何のための規格かということになったのです。DOC規格外のワインでIGT(地酒)、VdT(テーブルワイン)扱いだったのですから下克上もいいところですよ。英国のワイン・ジャーナリストがその現象を評して"Super Tuscan" 「トスカナ産の超上質ワイン」と書いたので、以来、トスカナ地方の優秀なワインがそう呼ばれるようになったようです。(※"Tuscan" は英語で「トスカナ人」「トスカナ語」の意)
南 海 子:さて、この「プロミス」、味はどうでしょうね
酒豪先生:深みのある味わいですね。ボディが強い、つまりコクがあるということですね。喉の奥から鼻に抜ける時の香りがいいじゃないですか
南 海 子:高級ワインを飲んだ時に感じることですが、共通している要素としてある種のカビ臭さがあります。別に悪いということではありませんよ、印象ですから
洋画紳士:コルクも上質なものを使っていますね、ちょうど5cm。「オーパス・ワン」やボルドーのいいワインも5cmあります
酒豪先生:抜栓して15分くらいですが、初めに飲んだ時より酸味が弱くなり、逆に甘みを感じるようになりましたね
南 海 子:口当たりも滑らかになったようで、こういう変化も面白いですね
洋画紳士:これは4000円台のワインですが、価格比ではどうでしょうか
酒豪先生:難しい価格設定ですね。考えようによるでしょうが、GAJAを買うとなると何万円もかかるのですから、そう高いとも言えないと思います
南 海 子:5000円未満なら新世界ワインの中にたくさんの候補がありますから悩みますね・・・でも味には満足しています、ごちそうさまでした

■評価
南 海 子:4.5
酒豪先生:4.5
洋画紳士:4

2011年1月13日木曜日

Opus One オーパス・ワン 2005 14%







■カリフォルニア・ワインの最高峰に挑む
洋画紳士:今回はカリフォルニア・ワインの傑作として名高い "Opus One" です。
南 海 子:ラベルに二人の横顔が描かれていますが、これはロールシャッハ・テストですか。
酒豪先生:南海子さんも洋画紳士みたいな冗談を言うようになりましたね。この二人はロバート・モンダヴィとフィリップ・ロートシルト男爵です。ラベルの下の方には二人のサインも入っています。
洋画紳士:オーパス・ワンは彼らのジョイント・ヴェンチャーとして造られたワインです。肖像とサインは、このワインについては自分たちの名誉にかけて保証するということでしょうね。カリフォルニアの最上のブドウとムートンのノウハウとの幸福な結びつきの証なんですよ。
酒豪先生:裏のラベルには、「OPUS およびOPUS ONE、横顔のシルエット・デザインは登録商標である」と書かれています。つまり、他のワイナリはOPUS TWO, OPUS THREE などを商標に使うことは出来ないわけです。
南 海 子:「オーパス・ワン」の名前の由来は?
洋画紳士:"opus" というのは「仕事」、「作品」という意味のラテン語で、「オーパス・ワン」は「作品1」ということです。これは音楽だけには限らないのですが、たとえばベートーヴェンのピアノソナタ 第23番「熱情」はOpus 57 ですし、交響曲 第5番「運命」は Opus 67です。どうやら彼らは音楽好きなのでしょう、オーパス・ワンのセカンド・ワインには "Overture" 「序曲」と名付けているほどですから。
酒豪先生:そもそも、この安いとはいえないワインを買ってみようと思ったのは、先日所要で銀座に行った帰り、新橋に向って歩いている時に、小さなワイン・バーがあることに気がついて入ってみたんです。
南 海 子:そのバーはほんとに小さなお店で、もともとは酒屋さんだったらしい。何しろ銀座にはお酒を飲ませるところは居酒屋から超高級バーまで数え切れないくらいあるはずですから、配達だけで営業できるのでしょう。小さな空間をワインバーにして改造して、カウンターでグラスワインを飲めるようにしてあったのです。
酒豪先生:そこで飲んだオーパス・ワンがよかった。このカリフォルニア・ワインの名前は聞いたことはあったのですが、これほどの完成度に達しているとは思っていなかったのです。
洋画紳士:どんな味だったのですか?
酒豪先生:味を言葉で表現するのは難しい・・・ぼくが思ったは、ブドウから作られた最も完成度の高い酒の一つだということでした。
洋画紳士:「の一つ」という言い方に含みがありそうですね。
酒豪先生:そうです。酒を評価する時に「最高」とか「究極」とかいう言葉は使うものではない、と思います。というのは、飲む方の嗜好や経験の質・量、そしてその時の気分や体調などの要素が複雑に絡み合っているのですから、簡単には言えない。飲んだその時、ある感想を持つというだけなんです。
南 海 子:銀座では、ちょっとしたおつまみだけで飲んだので、食中酒としてのワインを、しかもこれほどの高級ワインを語るにはお膳立てがちょっとカンタン過ぎました。

洋画紳士:なるほど、では今夜、銀座での経験が再現できるかどうか・・・・飲んでみましょうか。
酒豪先生:口に含んで、香りが上顎から鼻に抜ける時に感じる風味がいい。ある強さがあって、口の中の粘膜に沁みこんでいくようです。
南 海 子:香りが印象的ですね。深みがあって本格的です。今でも完成度の高さは分りますが、2005年物ですからあと数年熟成させたらもっとよくなったかもしれません。
洋画紳士:私がいつも参照しているH. ジョンソンのワイン・ハンドブックには「本家のムートンも油断なきように」と書かれています。
南 海 子:その言い方も面白いですね。いいワインだけれど、ムートンにはまだ比肩できていない。しかし油断していたら追い越されてしまうよ、というニュアンスが込められているように感じました。
酒豪先生:オーパス・ワンのワイナリはナパの北側に位置するオークヴィルにあり、モンダヴィの畑の斜向かいです。この辺りは最上のカベルネが実るといわれている地域ですが、オーパス・ワンのブドウはトカロン畑(To Kalon Vineyard)で収穫されたものだそうです。使われているブドウはカベルネソーヴィニヨンが主ですが、単一品種ではなく、ボルドーの流儀でメルロやカベルネフラン、マルベックなどのブレンドのようです。具体的な品種についてはラベルには記載されていませんが・・・
洋画紳士:私は一級ワインで飲んだことのあるのはムートンだけですが、オーパス・ワンの方が好きだな。「力」を感じますし、素直においしいと思えますから。
南 海 子:やはり洋画紳士は新世界ワイン好きなんですよ。

■評価
南 海 子:4
酒豪先生:4.5
洋画紳士:4.5

2011年1月8日土曜日

D. Paul Mas ドメーヌ・ポール・マス ラングドック・ルーション 2009・13.5%・シャルドネ&ヴィオニエ







■新年会にヴァン・ド・ペイを飲む
洋画紳士:Languedoc(ラングドック)という地域がありますが、あれはもともと中世にロワール河以南で使われていた方言を指す言葉だったらしいですね。つまり、Langue(言葉)+ oc(オック語で "oui" の意)というのです。
酒豪先生:あれ、今日はフランス語の話から始まるのですか。コノスルの時はスペイン語でしたね。
南 海 子:フランスの地中海に面した地域はぶどう作りが盛んだと聞きましたが、"d'oc" というのはどのあたりですか?
洋画紳士:ロワール河以南というと大雑把過ぎてフランスの半分くらいになってしまう。もっと狭くいうと"d'oc" はリヨン湾に面した南部地方のことだと思います。
酒豪先生:地中海沿岸地域は、ボルドーやブルゴーニュのような中~高級ワインの産地ではなく、テーブルワインの産地として知られていましたが、近年(1970年代から)ヴァン・ド・ペイ表示が認められるようになってから注目を集めるようになったそうです。
洋画紳士:中~高級品の多くはAC(原産地呼称統制)で厳しく規制されているのに対して、ヴァン・ド・ペイ(Vin de Pays) は規制が緩く、伝統品種以外のブドウ種を使ってもよいことになっています。品質表示ではその下にヴァン・ド・タブル(Vin de Table) という日常酒としてのワインがあり、こちらは原産地も品種、生産年も表示する必要はないのです。
話が飛ぶようですが、マグナムの写真家でアンリ・カルティエ・ブレッソンという人をご存知でしょうか。スナップ写真の第一人者といわれた人で、いくつかの作品はきっとどこかで見たことがあるのではないかと思いますが・・・
南 海 子:洋画紳士らしい脱線ですね。ヴァン・ド・ペイの話からいきなり写真ですか。
洋画紳士:ブレッソンの撮った作品で、フランス人の男の子が両手に二本の大瓶を持ってお使いから帰る情景を写したもの(「パリ・ムフタール通り。日曜日の朝、食品買入れの光景」1958)があります。空き瓶を持って酒屋に行き、量り売りのテーブルワインを買って来たのでしょう。フランス人は何しろ飲む量が違いますから、いちいち銘柄ワインを飲んでいるわけではない。量り売りの安ワインが日常酒なのです。
南 海 子:やっと話がつながりましたね。では名もない日常酒をヴァン・ド・ペイ規格を作って格上げしたのはなぜ?
酒豪先生:それはフランスのワイン生産者にとって脅威になりつつある新世界ワインに対抗するための新戦術だったわけです。ヴァン・ド・ペイなら世界品種のカベルネソーヴィニヨンやメルロー、シャルドネなどをラベルに大書して勝負することができるようになるのです。
南 海 子:このワインにはシャルドネとヴィオニエの二種類のブドウが使われていると書かれています。
酒豪先生:前置きが長くなってしまいましたが、さっそく飲んでみましょう。
南 海 子:グラスを鼻に近づけただけでフルーツの香りがします。味も悪くないようです。
酒豪先生:色もきれいな黄金色ですね、でも少し薄いかな。
洋画紳士:たしかに香りはいいけれど、少し舌に苦みが残る感じです。
南 海 子:苦みも、実は味の要素の一つですし、そんなに気になりませんでした。
酒豪先生:抜栓した時より香りが良くなってきました・・・まだ十分くらいしか経ってないのに・・・
洋画紳士:1500円未満なら合格というところですか。
南 海 子:もちろん。それに瓶の形もどっしりしたブルゴーニュ風ですし、ラベルに描かれた水鳥の絵もきれいで、私は気に入りました。
■評価
南 海 子:4
酒豪先生:4
洋画紳士:3.5

2011年1月3日月曜日

Newton ニュートン・シャルドネ、ナパ・2007・15%







■ナパのシャルドネを飲んでみる
洋画紳士:ナパには優れたワイナリがたくさんあるらしいのですが、このNewtonは中堅どころのようです。
南 海 子:ナパのシャルドネはフランスの名門と肩を並べる水準だと言われていますが、ボトルのデザインもブルゴーニュを意識したデザインのようですね。
酒豪先生:ナパというのはサンフランシスコの北方にある丘陵地帯でカリフォルニア・ワインの中心地になりました。
洋画紳士:Newtonはナパとソノマの境にある比較的標高の高い場所(スプリング・マウンテン)にあるワイナリのようです。このシャルドネはブレンドで、ナパ63%、ソノマ37%と表示されています。カリフォルニアのワイナリではあまり産地にこだわらずに良いブドウを買ってきてブレンドして醸造することも多いらしい。
酒豪先生:アメリカ人らしい合理主義でしょうね。またナパやソノマにはたくさんのブドウ畑があるので、ワイナリが求めているブドウが入手しやすいという条件も揃っているのだろうと思います。
南 海 子:いつか飲んだカレラのシャルドネもブレンドした比較的安いものと、単一畑の名を冠した高価なものがありましたが、値段ほどの差は感じませんでした。
酒豪先生:そうでしたね、コストパフォーマンスではブレンドに軍配が上がりました。
南 海 子:前置きはこのくらいにして、飲んでみましょうか。香りはいですね。
洋画紳士:粘性もたっぷりあって舌の横の部分で甘みを感じます。
酒豪先生:洋画紳士は舌で味わうんですね。私は口に含んだ時の香りを評価します・・・いい線いってます。2000円台なら上等です。
洋画紳士:H. ジョンソン氏はワインハンドブックの中でこのワイナリを「贅沢な葡萄園」、「豊麗さを感じさせる」と評していますよ。
酒豪先生:たしかにカリフォルニア産らしい厚みを感じさせる味ですね。でも高級ワインと比べると何か物足りない。
洋画紳士:酒豪先生はすぐにブルゴーニュの高級ワインと比較しますね。値段が1/10なんだからそこのところは斟酌しなくては・・・
酒豪先生:理屈ではそうですが、われわれ素人はどうしても比較法でしか判断できないものですからね。
南 海 子:裏ラベルにはNewtonは「ナパヴァレーを見下ろすスプリング・マウンテンの急峻な頂にある」と書いていますが。私はカリフォルニアのワイナリは平地にあるとばかり思っていました。
酒豪先生:ナパ・ヴァレーというからには周りは丘陵でなければならないわけです。山があって谷があるのですから。
洋画紳士:サンフランシスコは霧で有名ですが、その霧が周辺の気象に影響を与えているようですね。ナパ・ヴァレーという名称だけでテロワールを特定することはできないと言われています。このワインの出来がいいのも霧の恩恵があるのかもしれません。
■評価
南 海 子:4
酒豪先生:4
洋画紳士:4.5

2011年1月2日日曜日

ピション・ラランド Ch. Pichon Longueville Comtesse de Lalande 2003 13%


























■忘年会にポイヤックの二級ワインを飲む
洋画紳士:今日は年末ということで、年忘れにちょっといいワインを用意しました。
南 海 子:あ、ボルドーだ。洋画紳士好みの新世界ワインではないのですね。
酒豪先生:えっ、こんなにいいワインでしたか。ごちそうさまです。これはポイヤックでもいいワインの一つですよ。
洋画紳士:いつも新世界ワインを飲んでいるので、時には本家のボルドーを飲んでみようかなと思うことがあります。それで今夜は忘年会用に奮発したというわけです。
南 海 子:2003年ものですが、色は薄くなり透明になりつつありますね。グラスに注いだ時の泡もきれい。ポイヤックはボルドーのどの辺でしたか?
酒豪先生:ジロンド河の西岸・メドックの中ほどがポイヤック Pauillac で、ピション・ラランド・ロングヴィルの畑はポイヤックの南にあり、一級ワインのシャトー・ラトゥールの畑に隣接しています。
南 海 子:つまり絶好のテロワールということ?
酒豪先生:そうです。ピション・ラランドはスーパー2級と呼ばれてきましたし、実力は相当なものですよ。このクラスになると一級、二級の格付けはあまり問題ではないでしょう。
南 海 子:香りだけでも分りますが、口に含むとバターとカカオの風味を感じます。それにナッツの香りも混じっていますね。
酒豪先生:飲んだ時の印象ではラフィットに近い味です。そしてボルドーの高級ワインに共通する香りの良さを持っています。味はバターのような柔らかさとビロードの滑らかさを併せ持っているというところですね。香りは表現する言葉が見つからないけれど、僕の一番好きな香りの一つです。口の中から鼻に抜ける時、幸せな気分になります。
南 海 子:香りは植物エキスの究極のもの。ある種のハーブ香と共通していると思いました。
洋画紳士:お二人とも絶賛ですが、私には分りにくい味です。別にまずいというのではないし、安いワインとは違うということは分るのですが、格別うまいとも思いませんでした。つまり良さが分らないのです。
南 海 子:洋画紳士は新世界ワインの強烈さが好みなんですよ。だからカリフォルニア、チリ、アルゼンチンなどのおいしいワインを発掘することができたのでしょう。
酒豪先生:実際、あまり高くなくておいしいワインをいくつも見つけてきたのですから、新世界ワインに対する感性はいいんですよ。
洋画紳士:正直言って初めてボルドーの一級ワインを試飲会で飲んだ時の経験に似ています。あの時はムートン・ロートシルトでしたが、うまいともまずいとも判断できませんでした。これがボルドーの一級かと思っただけで・・・つまり二年以上経っても私の味覚はあまり進歩しなかったということかな・・・
酒豪先生:そうでもないでしょう。むしろ進境著しいくらいじゃないですか。高級ワインはそうしょっちゅう飲むものではないから味に慣れていないだけだと思います。
南 海 子:一つは慣れの問題、もう一つは嗜好のタイプが新世界ワインに向いているということでしょう。
洋画紳士:そういうことでしょうね。まあいずれにしてもワインについては「道遠し」というところですか。
■評価
南 海 子:4.5
酒豪先生:4.5
洋画紳士:判断できず、パス