2011年1月8日土曜日

D. Paul Mas ドメーヌ・ポール・マス ラングドック・ルーション 2009・13.5%・シャルドネ&ヴィオニエ







■新年会にヴァン・ド・ペイを飲む
洋画紳士:Languedoc(ラングドック)という地域がありますが、あれはもともと中世にロワール河以南で使われていた方言を指す言葉だったらしいですね。つまり、Langue(言葉)+ oc(オック語で "oui" の意)というのです。
酒豪先生:あれ、今日はフランス語の話から始まるのですか。コノスルの時はスペイン語でしたね。
南 海 子:フランスの地中海に面した地域はぶどう作りが盛んだと聞きましたが、"d'oc" というのはどのあたりですか?
洋画紳士:ロワール河以南というと大雑把過ぎてフランスの半分くらいになってしまう。もっと狭くいうと"d'oc" はリヨン湾に面した南部地方のことだと思います。
酒豪先生:地中海沿岸地域は、ボルドーやブルゴーニュのような中~高級ワインの産地ではなく、テーブルワインの産地として知られていましたが、近年(1970年代から)ヴァン・ド・ペイ表示が認められるようになってから注目を集めるようになったそうです。
洋画紳士:中~高級品の多くはAC(原産地呼称統制)で厳しく規制されているのに対して、ヴァン・ド・ペイ(Vin de Pays) は規制が緩く、伝統品種以外のブドウ種を使ってもよいことになっています。品質表示ではその下にヴァン・ド・タブル(Vin de Table) という日常酒としてのワインがあり、こちらは原産地も品種、生産年も表示する必要はないのです。
話が飛ぶようですが、マグナムの写真家でアンリ・カルティエ・ブレッソンという人をご存知でしょうか。スナップ写真の第一人者といわれた人で、いくつかの作品はきっとどこかで見たことがあるのではないかと思いますが・・・
南 海 子:洋画紳士らしい脱線ですね。ヴァン・ド・ペイの話からいきなり写真ですか。
洋画紳士:ブレッソンの撮った作品で、フランス人の男の子が両手に二本の大瓶を持ってお使いから帰る情景を写したもの(「パリ・ムフタール通り。日曜日の朝、食品買入れの光景」1958)があります。空き瓶を持って酒屋に行き、量り売りのテーブルワインを買って来たのでしょう。フランス人は何しろ飲む量が違いますから、いちいち銘柄ワインを飲んでいるわけではない。量り売りの安ワインが日常酒なのです。
南 海 子:やっと話がつながりましたね。では名もない日常酒をヴァン・ド・ペイ規格を作って格上げしたのはなぜ?
酒豪先生:それはフランスのワイン生産者にとって脅威になりつつある新世界ワインに対抗するための新戦術だったわけです。ヴァン・ド・ペイなら世界品種のカベルネソーヴィニヨンやメルロー、シャルドネなどをラベルに大書して勝負することができるようになるのです。
南 海 子:このワインにはシャルドネとヴィオニエの二種類のブドウが使われていると書かれています。
酒豪先生:前置きが長くなってしまいましたが、さっそく飲んでみましょう。
南 海 子:グラスを鼻に近づけただけでフルーツの香りがします。味も悪くないようです。
酒豪先生:色もきれいな黄金色ですね、でも少し薄いかな。
洋画紳士:たしかに香りはいいけれど、少し舌に苦みが残る感じです。
南 海 子:苦みも、実は味の要素の一つですし、そんなに気になりませんでした。
酒豪先生:抜栓した時より香りが良くなってきました・・・まだ十分くらいしか経ってないのに・・・
洋画紳士:1500円未満なら合格というところですか。
南 海 子:もちろん。それに瓶の形もどっしりしたブルゴーニュ風ですし、ラベルに描かれた水鳥の絵もきれいで、私は気に入りました。
■評価
南 海 子:4
酒豪先生:4
洋画紳士:3.5

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